女子サッカー選手のケガの予防について ~報道ステーションの取材から~

先日、ある番組にて女子サッカー選手の膝のケガを予防する取り組みについて特集が組まれました。

私も取材を受けた一人として、現在の活動を紹介させていただきました。

 

女子サッカー選手に多いケガとして、足首の捻挫、膝の靱帯損傷が挙げられます。

特に膝の靱帯損傷、なかでも前十字靱帯損傷(ACL損傷)は競技復帰までに半年以上かかるため、選手だけでなく指導者も、何とか防ぎたいケガの一つです。

 

しかしながら女子サッカー選手のACL損傷は男子選手の4~8倍(おしなべて5倍)の発症率であり、本邦の中~高校生のすべてのスポーツ活動従事者においては、年間に2万人以上がこのケガを受傷しているという報告もあります。

 

したがってACL損傷を防ぐための方法は、女子アスリートあるいは女子アスリートを指導するもの全員が心得ておく必要があるでしょう。

 

特集のなかでも紹介されているように、ACL損傷の多くはジャンプ後の着地や切り返し運動時に「膝外反*」という肢位をとることで生じます。したがって、ウオーミングアップでもジャンプの着地や切り返し時にこの肢位をとらないような1)動き作りと2)機能向上が求められます。

 

現在国際サッカー連盟(FIFA)ではFIFA11+(日本版はhttp://www.jfa.or.jp/jfa/medical/11plus.html)というケガ予防のプログラムが提唱されています。このエクササイズはACL損傷予防だけに特化されたものではありませんが、これを継続することにより、成長期女子サッカー選手の重篤な膝外傷が50%程度少なくなることが報告されています。

 

トップアスリートを対象とした場合には、より高いレベルで機能改善を図ることも必要とされますが、少なくとも練習や試合前に

 

①バリスティック&ダイナミックなストレッチング

②バランス(固有受容性 神経ー筋促通)

③コーディネーション(全身協調性)

④筋機能(局所&複合)

⑤動作(基礎的&専門的)

⑥プライオメトリクス(ジャンプなど)

 

の6つの要素をいれたエクササイズを行い、それぞれの機能を活性化することが必要と考えられます。

 

ウオーミングアップというと、文字で示されているように体を温めればよいという考えに陥りがちですが、ケガの予防やパフォーマンスアップのために「機能を活性化する」ということが必須なのです。

 

現在私たちは「warming-up」だけでなく「Prehabilitation」という考え方をもって活動を続けています。

habilitationとは「活性化する」ということです。

「Re-habilitation(リハビリテーション)」がケガによって損なわれた機能を再び(Re)活性化する(habilitation)するという意味であるのに対し、Pre-habliitation(プレハビリテーション)は事前に機能を活性化してケガの予防とパフォーマンスアップを図ろうという考え方です。

 

是非アスリートも指導者も、スポーツで生じるケガの予防法について情報収集し、ケガを防ぐための対策をとりつづけていただきたいと思います。

 

 

*解剖学的な膝外反位というよりも、膝関節外反+脛骨内旋をとっており、膝には回旋ストレスも加わっています。